
生成AIで曲を作れること自体は、すでに珍しくありません。
変わったのは、AIを使って作られた楽曲が実験作品ではなく、普通の音楽と同じ配信面、チャート、プレイリスト、ラジオで聴かれるようになったことです。
2025年には、Xania MonetがAI駆動型アーティストとしてBillboardのAdult R&B Airplayに入り、Breaking Rust「Walk My Walk」はCountry Digital Song Salesで1位を記録しました。
The Velvet SundownもSpotifyで急速にリスナーを増やし、AIバンドかどうかを巡る議論そのものが大きな話題になりました。
ただし、「AIが作った曲」という言い方はかなり曖昧です。
人間が歌詞を書き、AIが歌声と伴奏を作るケースもあれば、AIは一部の補助だけというケースもあります。
そこでこの記事では、チャート実績、再生規模、話題性、AIの関与範囲を分けて整理します。
今回は、Billboard等で確認できるチャート実績、主要配信サービスでの再生規模、社会的な話題性、AI関与が公表・確認されているかを総合して順位を付けています。
再生数はプラットフォームごとに集計方法が異なり、日々変動します。
またBillboardにもHot 100、ジャンル別、デジタル売上、ラジオなど複数チャートがあります。
そのため「何位だったか」だけでなく、どのチャートで記録した順位なのかを必ず併記します。
Adult R&B Airplay初登場30位
Hot R&B Songs最高20位
R&B Digital Song Sales 1位
人間が歌詞を担当し、Sunoで音楽・歌声を生成するAI支援型
現在のAI音楽を理解するうえで最も分かりやすい事例がXania Monetです。
Billboardによると、Xania Monetは詩人Telisha “Nikki” Jonesが作ったAI駆動型アーティストで、Jones自身が歌詞を書き、Sunoを使って楽曲制作を行っています。
「How Was I Supposed to Know?」はR&B Digital Song Salesで1位、Hot R&B Songsで最高20位を記録し、その後Adult R&B Airplayに30位で初登場しました。
AIベースのアーティストがBillboardのラジオチャートに入った初の確認例として報じられています。
公式YouTubeでは、2025年11月公開のミュージックビデオが2026年9月の確認時点で300万回超、YouTube Musicの自動生成版は700万回超再生されています。
ここで興味深いのは、すべてをAIが自動生成しているわけではない点です。
歌詞の核は人間が担い、AIが歌声・音楽表現を作る。
AI音楽の商業化では、この「人間の企画・文章+生成モデル」という組み合わせが一つの主流になっています。
Country Digital Song Sales 1位
2026年9月確認時点でSpotify上の代表曲は2,500万回超再生
AI関連プロジェクト。人間の作曲者クレジットも存在
https://www.youtube.com/watch?v=lTwajvObeW0
3. The Velvet Sundown / Dust on the Wind
2025年にSpotify月間リスナー100万人超
AIバンド論争の象徴的存在
人間の創作ディレクション+AIによる作曲・歌声・ビジュアル支援を公表
Breaking Rustの「Walk My Walk」は、2025年11月にBillboardのCountry Digital Song Salesで1位になりました。
ただし、Hot Country SongsやHot 100の1位ではありません。デジタル購入を対象とする専門チャートでの1位です。
Billboardの2025年10月時点の集計では、Breaking RustはEmerging Artistsに9位で初登場。
その後「Walk My Walk」がCountry Digital Song Sales首位まで伸びました。
2026年9月にSpotifyページを確認すると、「Walk My Walk」は2,500万回超、「Livin’ on Borrowed Time」は2,700万回超と表示されており、一時的な話題だけではない再生規模に達しています。
一方、AIの関与範囲については表現に注意が必要です。
報道ではAI生成・AI支援と広く呼ばれていますが、楽曲には人間の作曲者・プロデューサーのクレジットもあります。
「AIだけで作られた」と単純化せず、人間の制作工程とAI表現の組み合わせとして見る方が正確です。
The Velvet Sundownは、チャート順位より「正体そのもの」が話題になったプロジェクトです。
2025年にSpotifyで急速にリスナーを増やし、100万人を超える月間リスナーを集めた時期がありました。
その後、公式側は「synthetic music project guided by human creative direction」と説明し、作曲、歌声、ビジュアルにAIの支援を使っていると明らかにしました。
完全自動生成を意味する表現ではなく、人間のディレクションを明示しています。
2026年9月20日時点のChartmetricではSpotify月間リスナー約11.9万人とされ、ピーク時からは減っています。
ここから分かるのは、AI音楽も「AIだから伸び続ける」わけではないことです。
話題性、楽曲の継続力、プレイリスト露出、ファン化が必要なのは人間の音楽と変わりません。
Emerging Artists 47位
Rock Digital Song Sales 10位
人間の創作とAIを組み合わせるAI支援型と公表
BillboardはUnbound Musicを、ソングライターTerrance LeDouxによるAI支援型プロジェクトとして紹介しています。
「You Got This」はRock Digital Song Salesで10位、プロジェクトはEmerging Artistsで47位に入りました。
2025年10月時点でカタログ全体は550万の公式ストリームを記録。
AI音楽のヒットが一部の匿名プロジェクトだけではなく、複数ジャンルへ広がったことを示す例です。
Emerging Artists 44位
Rock Digital Song Sales 15位
録音・制作とAI-powered creativityの併用を公表
Enlly BlueもAIと通常制作を組み合わせるタイプです。
Billboardによれば、「Through My Soul」はRock Digital Song Salesで15位、Enlly BlueはEmerging Artistsで44位に初登場しました。
アーティスト説明では、アコースティック音楽、制作、録音、AI-powered creativityを組み合わせるとされています。
AI利用を公表しつつ、人間の録音や制作を併用するケースは、今後さらに増えると考えられます。
AI音楽を一括りにすると実態を見失います。
Xania Monetでは、人間が歌詞を書き、AIが歌声や楽曲生成を担当します。
The Velvet Sundownは人間のディレクションを前提に、音楽、声、ビジュアルへAIを利用。
Unbound MusicやEnlly Blueは、人間の制作とAIの併用を明示しています。
この違いは著作権やクレジットにも関係します。
歌詞、メロディ、編曲、歌声、マスタリング、ジャケットのどこを人間が作ったかで、保護される範囲や権利処理が変わるためです。
そのため、AI音楽を見るときは「AIか人間か」の二択ではなく、制作工程を分解して確認する必要があります。
2025年10月、Billboardは直近数か月だけで少なくとも6組のAIまたはAI支援アーティストが各種チャートに登場したと報告しました。
従来、AI音楽はSNS上の実験やネタとして拡散する例が中心でした。
ところが現在は、有料ダウンロード、ストリーミング、ラジオ、レーベル契約まで到達しています。
Xania Monetには数百万ドル規模の契約をめぐる報道もあり、AIアーティストを「商業商品」として扱う動きが可視化されました。
ただし、チャートの意味は正確に読む必要があります。
Digital Song Salesは購入数、Adult R&B Airplayはラジオ放送、Hot R&B Songsは複数指標を組み合わせるなど、計測対象が違います。
「Billboardで1位」という見出しだけでは、その楽曲が全米で最も聴かれた曲なのか、特定ジャンルの有料購入で首位だったのか分かりません。
AI音楽ほど話題性のあるテーマでは、チャート名まで確認することが重要です。
米国著作権局は2025年のAI報告書Part 2で、生成AIを使った作品でも、人間が十分な表現要素を決定していれば著作権保護の対象になり得ると整理しています。
一方、プロンプトを入力しただけで、機械が表現を決定した部分には原則として人間の著作権は認められません。
つまりAIを使ったこと自体が問題なのではなく、人間が何を創作したかが問われます。
音楽ではさらに、学習データ、声の類似、既存アーティストへのなりすまし、配信プラットフォームの表示ルールなどが加わります。
Breaking Rustをめぐっては、既存歌手の声質との類似が倫理面で議論されました。
クリエイターが収益化する場合は、AIサービスの商用利用条件だけでなく、使用した音源、声、サンプル、歌詞、ジャケットの権利まで確認する必要があります。
① 使用ツールの商用利用条件です。無料プランと有料プランで権利条件が違うサービスがあります。
② 歌詞や素材の出所。既存曲の歌詞やメロディを安易に入力すると、権利問題が発生する可能性があります。
③ 声の扱いです。実在歌手に似せた声は、著作権だけでなくパブリシティ権や人格権、契約上の問題につながる可能性があります。
④ AI使用の表示。プラットフォーム側のラベルや申告制度が変わる可能性があるため、公開時点のルールを確認します。
AI音楽の現在地は、「人間の曲に追いついたか」という感想論だけでは捉えられません。
すでにBillboardの専門チャート、ラジオ、主要配信サービスに入り、数千万回単位で再生される例も出ています。
一方、成功例の多くは完全自動ではありません。
人間が歌詞、企画、選択、編集、プロモーションを担い、その一部を生成AIが担当しています。
今後、AI音楽を見る際は再生数だけでなく、どのチャートで評価されたか、AIがどこまで関与したか、人間のクレジットがどう付いているかを見ると実態が分かりやすくなります。

