
台風が近づいているとき、どの段階で準備を始めればよいのか。
大きな地震が起きたとき、家の備蓄だけで何日過ごせるのか。防災の必要性は分かっていても、自分の生活に置き換えると迷うことは少なくありません。
2026年11月2日に予定される防災庁の発足を前に、政府による備蓄の呼びかけにも関心が集まっています。
こうした備えを考えるうえで、もう一つ知っておきたいのがAIの役割です。
気象データから洪水を予測する技術だけでなく、自治体が状況を整理するための実証や、家庭の備蓄を考える使い方もあります。
この記事では、防災に使われるAIの実例をたどりながら、個人で試せる方法と、災害時に任せてはいけない判断を整理します。
情報は2026年11月1日時点です。
防災庁は2026年11月2日に発足予定で、細野防災担当相は発足に合わせ、国民や自治体などに防災対策を呼びかける方針を示しています。
家庭には食料や水、トイレを最低3日分、できれば1週間分用意してほしいとしています。
この記事の執筆時点では要請の正式な内容はまだ発表前です。
3日分という考え方自体は新しいものではありません。
首相官邸も従来から最低3日分の水・食料の備蓄を案内しており、政府広報は食品について最低3日分、できれば1週間分の用意を勧めています。
発足時の呼びかけを、普段の備えを点検する機会と捉えるとよいでしょう。
災害対応では、雨量、河川の水位、地形、道路や建物の状況など、異なる情報を短時間で組み合わせなければなりません。
AIは、こうしたデータに含まれる傾向を学習したり、大量の情報を整理したりすることで、人が状況を把握する手助けをします。
内閣府の防災白書でも、衛星、AI、ビッグデータなどを活用し、国や自治体の意思決定を支援する研究開発が紹介されています。
ただし、防災庁の発足と個々の技術の導入は別のことです。以下の事例は、それぞれの機関が進める取り組みとして紹介します。
欧州中期予報センター(ECMWF)は2025年2月、AIを使った気象予測システム「AIFS」の運用を始めました。
従来の物理法則に基づく予測システム「IFS」と並行して動かしています。
AIFSは過去の気象データから大気の変化を学び、現在の観測・解析情報をもとに将来の状態を予測します。
従来方式もAI方式も、台風の進路や雨の見通しを考える材料になりますが、どちらも未来を確定するものではありません。
進路の幅や最新の予報を確認する必要があります。
ECMWFの予測は専門機関が扱う情報の一つで、予測結果と避難の判断は別です。
日本で行動するときは、気象庁の警報や自治体の避難情報を確認してください。
Googleの「Flood Hub」は、気象や地形などの情報を使い、河川の洪水予測を地図上で確認できるサービスです。
Googleによると、河川を流れる水の量を予測するモデルと、その水がどの地域へ広がるかを推定するモデルを組み合わせています。
同社の2026年の説明では、大きな河川洪水の予測は150を超える国々の対象地域をカバーしています。
ただし、この数字は対象地域の範囲であり、すべての河川や住所を予測できるという意味ではありません。
閲覧できる地点や予測期間は地域や災害の種類で異なります。
洪水は雨が弱まった後にも起こり得るため、「今、自宅で降っている雨」だけでは判断しにくい災害です。
上流を含めた予測が、早めに備えを考える材料になります。
内閣府が紹介する事例では、令和2年7月豪雨の際、福岡県東峰村で、AIを使った市町村災害対応統合システムの実証が行われました。
この実証では、防災気象情報などから土砂災害の危険度を分析し、避難対象エリアの人口や避難所までのアクセスなども考慮。
避難判断を支援する情報を最大6時間先まで予測して自治体へ提供しました。
この事例でAIが担ったのは、避難指示を出すことではなく、自治体が判断するための情報を提供することです。
予測を役立てるには、入力データの品質や更新頻度に加え、地域の事情を知る担当者の確認も欠かせません。
地震や豪雨の直後は、道路の寸断や通信障害によって、現地の様子がすぐに分からない場合があります。
衛星画像や航空写真を使った被災状況の把握は、広い範囲を確認するための手段です。
内閣府は令和2年7月豪雨で、解析した衛星画像や道路・停電・断水などの情報を災害対応機関で共有し、被災状況の把握やライフライン復旧などを支援したと報告しています。
この事例は衛星画像などを共有した取り組みであり、被害をAIが自動判定したと確認されたものではありません。
防災科学技術研究所では、画像や音響データからAIなどを使って建物内の被害度を判定し、その後の活動に役立てる研究も進めています。
こちらは将来の活用を目指す研究段階の取り組みです。
画像に写っていない場所や、夜間・悪天候で見えにくい箇所の状況は分かりません。
道路が通行可能に見えても、橋の安全性や現場の交通規制は別に確認する必要があります。
AIが情報を素早く整理できれば、調査や支援の優先順位を考える助けになります。
一方、住民からの情報や現地調査と突き合わせることが、判断の精度を左右します。
家庭で生成AIを使うなら、最初から「完璧な防災計画」を求めるより、家族の人数や普段の生活に合わせて、何が足りないかを整理する使い方が現実的です。
政府広報は飲料・調理用の水について、1人1日あたり3リットルを目安にしています。
また、携帯トイレは1人1日5〜6回を目安とし、7日分を例に紹介しています。
たとえば3人家族なら、単純計算で水は3日分が27リットル、7日分が63リットル。携帯トイレは3日分で45〜54回分、7日分で105〜126回分が目安です。
生活用水や体調、季節、乳幼児・介護の有無などで必要量は変わるため、各家庭の事情に合わせて調整します。
水だけをそろえても、停電で調理器具が使えなければ食事に困ります。
普段食べるものを少し多めに買い、消費した分を買い足す「ローリングストック」なら、食品の期限を管理しながら備えを続けやすくなります。
次の文章をChatGPTなどに入力すると、家庭の状況に合わせた準備リストを整理できます。
大人2人、小学生1人の3人家族です。
停電と断水を想定して、まず3日分、次に7日分の備蓄を準備したいです。
水、食料、携帯トイレ、衛生用品、照明・電源、普段使う薬などに分け、人数と日数に応じた数量の目安、すでに家にあるもので代用できるもの、優先順位を表にしてください。
政府や自治体の確認可能な情報源を示し、根拠を確認できない数量は推測と明記してください。
住所や氏名などを入力する必要はありません。
回答を受け取ったら、水やトイレの数量を政府広報と照合し、すでに家にあるものを差し引きます。
そのうえで「予算5,000円で最初にそろえる物を提案して」と追加すると、買い物の順番も考えやすくなるでしょう。
価格は店や時期で変わるため、購入時に確認してください。
備蓄以外にも、生成AIには次のように相談できます。
ただし、詳細な住所や氏名、病名などを入力しなくても、一般的な準備は相談できます。
必要以上の個人情報を入力せず、地域に固有の避難先や安全性は自治体の公式情報で確認しましょう。
「AIが○月○日に大地震が起きると予測した」といった情報には注意が必要です。
気象庁は、地震の発生日時・場所・規模を高い確度で予測する手法は、現在の科学では確立していないと説明しています。
緊急地震速報は、地震が起きてから観測されたデータをもとに、強い揺れが到達する前に知らせる仕組みです。
発生前に地震の日時を予知するものではありません。
震源に近い場所では、速報が強い揺れに間に合わない場合もあります。
生成AIが古い避難所名を答えたり、災害の種類に合わない場所を提案したりする可能性があります。
同じ施設でも、洪水、地震、土砂災害などによって指定の扱いが異なることもあるためです。
避難先は自治体が公表する情報で確認し、ハザードマップや実際の道路状況も踏まえて検討しましょう。
災害時に施設が開設されているかどうかも、自治体の最新発表で確認が必要です。
危険が迫っている場合は、情報検索に時間をかけすぎず、自治体の指示と周囲の状況に従って命を守る行動を優先してください。
災害時にスマートフォンの電池が切れたり、通信が混雑・停止したりすれば、生成AIやウェブサイトへアクセスできないことがあります。
家族の連絡方法、避難先、必要な持ち出し品は、平時に確認して紙にも残しておくと安心です。
紙の控えは、停電や通信障害でスマートフォンを使えないときにも役立ちます。
AIは、災害が起こる前の予測から、自治体の状況把握、家庭の備蓄整理まで、さまざまな場面で役立ち始めています。
すでに運用されている技術もあれば、実証や研究が続いているものもあり、できることの範囲はそれぞれ異なります。
今日から始めるなら、家族の人数をもとに水と食料、携帯トイレの備蓄を数え、足りないものをAIと一緒に整理してみてください。
最後に自治体のハザードマップと避難先を確認し、必要な情報を紙にも残しておけば、AIを使えないときの備えにもなります。

