
Codexを開いて最初に戸惑うのはモデル名の違いかもしれません。
ChatGPTでは「GPT-5.5」や「Thinking」といった名前に慣れていたのに、Codexでは新しく「Sol」「Terra」「Luna」のような名前が出てくる。
しかも、どれも強そうに見えるため初心者ほど「結局どれを選べばいいのか」で止まりやすくなります。
OpenAIは新しく発表されたGPT-5.6のモデルをSol、Terra、Lunaという複数の能力ティアで展開しています。
公式発表では:
・Solはフラッグシップ
・TerraはGPT-5.5と競合する性能を持つ低コスト側の選択肢
・Lunaは最速・最安寄りのモデル
ただし、この記事の目的は「どれがベンチマークで一番強いか」を比較するものではなく、
Codexを使い始めた人が自分の作業に合わせてモデルを選べるようになるために解説します。
モデルが複数ある理由は、開発作業や目的が必ずしも一種類ではないからです。
コードを書く仕事には、短い関数を直す作業もあれば、プロジェクト全体の設計を読み解きながら変更する作業もあります。
テストを追加するだけの日もあれば、仕様が曖昧なまま新機能を作る日もある。
全部を同じモデルで処理しようとすると、簡単な作業に大きなモデルを使いすぎたり、逆に複雑な作業を軽いモデルに任せて失敗したりします。
工具にたとえると分かりやすいかもしれません。
・ネジを締めるだけなら小さなドライバーで十分です。
・硬い材料を加工するなら電動工具が必要になります。
・家を建てるなら、工具だけでなく職人の段取りやチーム作業も関わってきます。
Codexのモデル選択もこれに近く「何でも最上位モデル」ではなく、作業の重さに合う道具を選ぶ考え方です。
OpenAIのCodexドキュメントでも、モデル選択は単にモデル名を選ぶだけではなくreasoning effort、つまり推論にどれだけ時間とトークンを使うかとセットで説明されています。
高い推論設定は複雑な作業に有利ですが、時間もトークンも増えるため、まずは標準設定から始め、必要に応じて上げるのが基本とされています。
ここで大切なのは、SolやTerraを「上位・下位」だけで見ないことです。
Solは難しい仕事に強いモデル、Terraは日常的な作業を現実的なバランスでこなすモデル、Lunaは明確で繰り返しやすい作業を軽く回すモデル。
Codexに複数モデルがあるのは開発の現場がそれだけ多様だからです。
CodexはOpenAIが提供するソフトウェア開発向けのAIエージェントです。
単に「コードを答えるチャット」ではなく、プロジェクトを読み、作業計画を立て、ファイルを編集し、必要に応じてコマンドを実行しながら開発作業を進めるための環境として設計されています。
OpenAIはCodexを、ChatGPT、エディタ、ターミナルで利用できる「同じエージェント」として説明しています。
ChatGPTとの違いは作業場所です。
ChatGPTは質問、相談、文章作成、設計の壁打ちに強い汎用の対話環境です。
一方、Codexはコードベースを対象にした作業環境であり、リポジトリ、差分、テスト、PRといった開発の流れに近い場所で動きます。
Claude Codeとの違いは使うモデルとエコシステムです。
Claude CodeはAnthropicのエージェント型コーディングツールで、コードベースを読み取り、ファイル編集やコマンド実行を行い、ターミナル、IDE、デスクトップ、ブラウザで利用できると説明されています。
CodexはOpenAIのモデルとChatGPTアカウント、Codex CLI、Codex Cloud、Codex IDE拡張などを軸にした開発体験です。
Cursorとの違いは、入口の設計です。
CursorはAIコーディングエージェントを備えたコードエディタとして展開され、デスクトップ、CLI、Slack、GitHubレビューなど、エディタ中心の体験を広げています。
Codexはエディタでも使えますがOpenAIのコーディングエージェントをChatGPT、ターミナル、クラウド作業へつなぐ色が濃くなっています。
この関係を図解すると、次のように整理できます。
初心者が混乱しやすいのは、「モデル」と「ツール」を混ぜて考えてしまう点です。
GPT-5.6 SolやTerraはモデル。
Codex、Cursor、Claude Codeは開発作業を行うためのツールや環境。
Codexは、その中でOpenAIのモデルを使ってコード作業を進める場所、と理解すると見通しが良くなります。
Solは、GPT-5.6ファミリーのフラッグシップモデルです。
OpenAIのCodexモデル説明では5.6 Solは複雑なコーディング、コンピューター操作、リサーチ、サイバーセキュリティにおける最も強い能力を持つモデルとして紹介されています。
CodexでSolを選ぶ場面は、作業の正解が最初からはっきりしていないときです。
たとえば
・バグの原因が複数ファイルにまたがっていそうな場合
・仕様と実装がズレている場合
・既存コードの構造を読み解いてから大きめの変更を入れる場合
こうした作業では単にコード片を出す力よりも、状況を読み、仮説を立て、必要な確認を行い、変更の影響を見積もる力が必要になります。
Solは、職人というより「設計もできるリードエンジニア」に近い存在です。
手元のタスクだけでなく、なぜその変更が必要なのか、どこに副作用が出るのか、どの順番で進めるべきかまで考えさせたいときに向いています。
一方で、Solを毎回使えばよいわけではありません。
公式ドキュメントでも高い推論設定は複雑な作業に有利な一方、より時間がかかり、トークンも使うと説明されています。
つまり、CSSのクラス名修正、単純な型エラー、短いREADME修正のような作業にSolを深い推論設定で使うのは性能としては過剰になりやすいということです。
Solが向いているのは、次のような人です。
・Codexに大きめの作業を任せたい人
・コードベース全体を読ませて判断させたい人
・失敗時の修正コストが高い作業を扱う人
・AIに「作業者」だけでなく「設計レビュー役」も期待したい人
初心者の場合も、最初のうちはSolから始めると安心です。
Codex公式ドキュメントも迷う場合はSolから始めるという案内を出しています。
Terraは、日常的な開発作業の主力になりやすいバランス型モデルです。
OpenAIはTerraを知能とコストのバランスを取るモデルとして説明しており、Codex向けの説明でも「GPT-5.5と競合する性能をより低いコストで提供する日常作業向けモデル」と位置づけています。
Solが難題に向かうリードエンジニアだとすれば、Terraは現場で手を動かせる頼れる実務担当です。
軽すぎず、重すぎない。日々のバグ修正、明確な機能追加、テスト作成、型修正、ドキュメント更新、既存コードに沿った小〜中規模の変更では、Terraがちょうどよい選択になりやすいでしょう。
Solとの違いは、単純な「賢さ」だけではありません。
Solは曖昧で高価値なタスクに深く考えさせるモデル。
Terraは、必要十分な推論と速度・コストのバランスを取りながら日常作業を継続的に処理するモデルです。
毎日Codexを使う人ほど、この違いが効いてきます。
たとえば、既にエラーメッセージが分かっているバグ修正なら、Terraで十分なことが多いはずです。
変更対象のファイルも決まっていて、期待する挙動も明確ならSolの深い推論を使わなくても前に進みます。
逆に、なぜ壊れているのか分からない、古い実装の意図を読み解く必要がある、複数案の設計判断が必要になる。
そうした場面ではSolに切り替える判断が自然です。
Terraを選ぶべきケースは「仕事の輪郭は見えているがある程度の理解力はほしい」ときです。
初心者にとってはSolを安心用、Terraを日常用と覚えると扱いやすくなります。
Sol、Terra、Luna、GPT-5.5を比べるときはベンチマーク順位ではなく「任せる作業の種類」で見る方が実用的です。
OpenAIのAPIドキュメントではSolは複雑な推論とコーディング、Terraは知能とコストのバランス、Lunaはコスト重視の高頻度ワークロード向けとして案内されています。
ここで押さえておきたいのはSolやTerraが「GPTシリーズとは別物」ではない点です。
OpenAIはGPT-5.6について、数字が世代、Sol・Terra・Lunaが能力ティアを示す名前だと説明しています。
つまり、GPT-5.6 SolはGPT-5.6世代の最上位寄り、GPT-5.6 Terraは同じ世代のバランス型、GPT-5.6 Lunaは高速・低コスト型という理解が自然です。
また、標準のChatGPT会話ではTerraとLunaは選択できず、プランに応じてWorkやCodex、APIで利用できるとHelp Centerに説明されています。
CodexではFree/GoがTerra、Plus以上がSol、Terra、Lunaを選べる構成として案内されています。
そのため、ユーザーの画面では「Codex用のモデル」のように見えますが公式上はGPT-5.6ファミリーのモデルがCodexにも展開されていると捉えるのが正確です。
Codexでモデルを選ぶときは、まず作業を三つに分けると迷いにくくなります。
一つ目は、答えの形が見えている作業。
テストを追加する、READMEを整える、型エラーを直す、JSONを変換する。
こうした作業はTerraやLunaが向きます。
二つ目は、答えの方向は分かるがコードを読んで判断する必要がある作業。
通常のバグ修正、既存機能の拡張、小さなリファクタリングなどです。
ここではTerraを基本にし、難しくなったらSolへ切り替えるのが現実的です。
三つ目は、正解そのものを探す作業。
設計方針が複数ある、依存関係が深い、修正範囲が広い、失敗すると影響が大きい。
この場合は最初からSolを選ぶ方が安全です。
CodexにはMaxやUltraのように選んだモデルへさらに深く考えさせたり、複数のサブエージェントで分担させたりする設定もあります。
ただし、公式ドキュメントは「ほとんどのタスクはMaxやUltraを必要としない」とも説明しています。
用途別に整理すると、次のようになります。
Codexではモデルを変えるだけで結果が劇的に改善する場合もありますが常にそうとは限りません。
むしろ、何を直したいのか、どのファイルを見てほしいのか、完了条件は何か、テストは何を通せばよいのかを伝える方が効く場面も多いはずです。
たとえば「このバグを直して」より、「ログイン後に /dashboard へ遷移しない。
期待挙動はログイン成功時に /dashboard へ移動すること。
関連しそうな認証処理とルーティングを確認し、必要ならテストも追加して」と頼む方が、Terraでも良い結果になりやすくなります。
SolやTerraを理解するとき、最初に捨てたい考え方があります。
それは、「一番賢いモデルを毎回選べばよい」という考え方です。
Codexはチャットで質問に答えるだけの場所ではありません。
コードを読み、作業を分解し、ファイルを変更し、テストや差分の確認まで進める開発環境です。
そこで必要になるのは、モデルの序列よりも、作業の重さに合わせた選択です。
Solは、難しい判断や曖昧な作業に向いた深いモデル。
Terraは、日常的な開発を支えるバランス型。
Lunaは、明確で大量に回す作業に向いた軽い選択肢。
GPT-5.5は従来の汎用的な専門作業を支えてきた基準点として見ると理解しやすくなります。
これからのAI開発は常に最上位モデルを選ぶ世界ではありません。
用途に合ったモデルを選び、必要なときだけ推論を深くし、作業そのものをうまく分ける世界です。
CodexのSolやTerraは、その変化を分かりやすく見せている存在だと言えます。

