
ChatGPTやGeminiを仕事で使い始めたものの、「結局、メールを書かせるか、検索するくらいしか使っていない」という人は少なくありません。
周囲がもっと高度な使い方をしているように見えると、自分だけ遅れているように感じることもあります。
ところが国内調査を見ると、実際の利用は意外に基本的です。
国際大学GLOCOMの「生成AIと日本2026」では、仕事で生成AIを使う人の最多用途は「調べもの・調査・検索・情報収集」。次いで文章の要約、翻訳、アイデア出し、議事録・要点メモ作成が続きます。
いきなり業務全体を自動化するより、日常の小さな作業から使い始める人が多いことが分かります。
ただし、「みんながよく使っている用途」と「次に試すと効果を感じやすい用途」は同じではありません。
検索や文章生成だけに留まると、AIが得意な分類、比較、チェック、準備、表計算支援を使わないままになりがちです。
この記事では、前半で国内調査から実際の利用TOP10を確認し、後半ではAITT独自のおすすめ10用途を紹介します。
おすすめ側では「何を渡すか」「何を頼むか」「何を人間が確認するか」の3点をセットにし、明日から仕事に入れやすい形にします。
仕事での生成AI利用を理解するときに、最初に注意したいのが調査の設計です。
「複数の用途を選べる調査」と「主な用途を一つ答える調査」では、同じ文章作成でも割合が大きく変わります。
利用者だけに聞いた調査と、全企業を対象にした調査も単純には比べられません。
本記事のTOP10は、GLOCOM「生成AIと日本2026」の仕事での生成AI利用方法をそのまま使います。
図表の対象は816人で、複数の利用方法が回答されています。
最多は「調べもの・調査・検索・情報収集」65.1%、次いで「文章の要約」45.5%、「翻訳」31.9%です。
別の角度から見ると、帝国データバンクが2026年3月に実施した企業調査では、生成AIを積極的に活用している企業は34.5%でした。
活用企業3,560社の「主な業務」では、文章作成・要約・校正45.1%、情報収集21.8%、企画・アイデア11.0%、データ集計・分析7.4%、プログラミング支援5.9%という順です。
こちらは「主な用途」を答える設問なので、GLOCOMの割合と合算するべきではありません。
NIRA総合研究開発機構の2026年調査でも、生成AIを仕事で定期的に使う人は27%、利用経験者まで含めると39%と報告されています。
定期利用者の74%が仕事の効率が高まったと答えており、利用が一部の先進層だけのものではなくなっていることが分かります。
複数の調査を並べて見える共通点は、文章生成、要約、検索、アイデア出しのような「入力と出力を短時間で確認できる仕事」が入口になっていることです。
一方、調査ごとの数字そのものは別物として扱う必要があります。
以下は、GLOCOM「生成AIと日本2026」に掲載された「仕事での生成AIの利用方法」の上位10項目です。
複数回答の一つの調査を順位化しており、他の調査数値は混ぜていません。
順位を見ると、1位と2位は「新しい成果物を丸ごと作らせる仕事」ではありません。
すでに存在する情報を探す、短くする、別言語に変えるといった作業です。
結果が正しいか人間側でも比較的確認しやすく、失敗したときの損失も限定しやすいのが共通しています。
一方、7位にはデータ分析、9位には会議準備が入っています。
生成AIを文章作成ツールだと思っている人でも、実際には表計算や意思決定前の準備まで利用が広がっています。
ここが初心者の次の伸びしろです。
10位のプログラミング支援は、利用者全員がエンジニアという意味ではありません。
最近の生成AIは、数式作成、データ整形、簡単なスクリプト、Webページの修正などにもコード能力を使います。
非エンジニアでも「このCSVを整理したい」「同じ処理を繰り返したい」と依頼することで、コードを直接書かずに恩恵を受けられる場面があります。
初心者の利用が検索や文章に偏るのは、能力不足ではなく導入のしやすさが大きな理由です。
チャット欄に文章を貼り、「要約して」「メールにして」と頼めばすぐ結果が返るため、専用の設定やデータ連携がいりません。
もう一つは、完成条件を想像しやすいことです。
メールなら読みやすいか、要約なら元文章の重要点を拾っているかを人間が確認できます。
対して「顧客データを分析して次の施策を決めて」と頼むと、どの列を使うか、欠損値をどう扱うか、何を成功とするかまで決めなければなりません。
ここでAI活用を一段進めるコツは、いきなり最終判断を任せることではなく、判断の前工程へ入れることです。
資料を分類する、比較項目をそろえる、見落としを探す、会議の論点を洗い出す。
こうした仕事はAIの得意な処理を使いつつ、人間が最後に確認しやすい形を残せます。
例えば会議準備なら、「何を話すべきか決めて」ではなく、過去メール、前回議事録、今週の数字を渡し、「未決事項、確認事項、想定質問を分けて一覧化して」と頼みます。
人間はその一覧から会議の目的に合わない項目を削り、事実関係を確認します。
データ整理も同じです。
売上表を渡して「分析して」と頼むより、「欠損、重複、表記揺れ、急な増減を先に列挙して。
元データは変更せず、修正案を別列で出して」と指示した方が、初心者でも出力を検証しやすくなります。
ここからの10選は調査の利用率順位ではなく、AITTが「文章作成や検索の次に試しやすい」と考えるおすすめです。
共通するのは、AIに丸投げせず、「渡すもの→頼むこと→確認すること」を分ける点です。
特に試しやすいのは「会議前準備」「データ整理」「レビュー」の3つです。
普段から手元にある材料を使えるため、新しいシステムを導入しなくても始められます。
会議前準備では、前回議事録と関係メールを渡し、「決まったこと/未決事項/今回確認すべきこと/相手から聞かれそうなこと」に分けてもらいます。
議事録を作るより前にAIを入れることで、会議そのものを短くしやすくなります。
データ整理では、表計算ファイルを読み込めるAIなら、列名の意味を説明したうえで欠損や重複を探させます。
重要なのは、AIに原本を直接上書きさせず、修正候補を別表や別列で出させることです。
数値の誤りがそのまま業務判断へ流れるのを防げます。
レビューでは「良くして」だけではなく、読者や目的を指定します。
例えば「初めてこのサービスを知る取引先の立場で、根拠が弱い箇所、意味が曖昧な箇所、反論されそうな点を挙げて」と頼むと、単なる文章校正より実務に近いチェックになります。
手順書化も効果が分かりやすい用途です。
自分しか分からない作業をメモし、AIに「新人が再現できる順番」「判断が必要な分岐」「失敗しやすい箇所」に組み替えさせます。
完成後は実際に別の人が手順だけで作業できるか試すことが必要です。
どのAIを使うかは、モデル名の人気だけで決める必要はありません。
先ほどの10用途に必要なのは、主にWeb検索、ファイル読解、表計算・データ分析、長文処理、Officeやクラウドストレージとの連携です。
ChatGPTは、CSVやExcel、PDFなどをアップロードしてデータ分析を行い、表やグラフを作る機能を公式に案内しています。
データ整理や数値チェックでは、ファイルを直接読み取れることが強みになります。
利用できる機能や上限はプランによって変わるため、実際の画面で確認してください。
Geminiも文書やスプレッドシート、画像などのファイルをアップロードして要約・分析できます。
Google Drive上の情報と連携できる環境では、会議準備や資料整理に使いやすい一方、組織アカウントでは管理者設定によって利用範囲が変わります。
Microsoft 365 Copilotは、Excel、Word、PowerPointなど普段使うOfficeファイルの中で作業できる点が特徴です。
Excelでは表の編集、数式、分析、グラフなどを支援できます。
社内業務がMicrosoft 365中心なら、外部サービスへファイルを移さずに済むことがメリットになる場合があります。
初心者は「どのAIが一番賢いか」より、次の順番で選ぶと迷いにくくなります。
Webの最新情報が必要なら検索機能、手元の資料を扱うならファイル読解、数字なら表計算・データ分析、社内ファイルなら既存サービスとの連携を優先します。
安全面では、便利さより会社のルールが先です。
顧客名、契約、個人情報、未公開決算、アクセス権限を含む資料を、許可されていないAIへ入力しないこと。
企業向けプランでデータの扱いが異なる場合もあるため、利用規約と組織設定を確認します。
AIの出力を最終判断に使うときも、責任は人間側に残ります。比較表の数値、法務・人事に関わる表現、顧客への回答、会計処理などは原典と社内ルールを確認してください。
AIは「判断を代わりにする装置」より「判断材料を整える装置」として使う方が、初心者には失敗を抑えやすくなります。
国内の利用実態を見ると、仕事での生成AI活用は決して派手な自動化ばかりではありません。
検索、要約、翻訳、アイデア、議事録、文章作成といった、日常の小さな作業が中心です。
まずそこから始めるのは合理的です。
そのうえで次の一歩として試したいのが、情報整理、比較、会議準備、レビュー、手順書、数値チェックです。
これらはすでに手元にある材料をAIへ渡し、出力を人間が確認できるため、失敗時の影響を抑えながら効果を感じやすい領域です。
今日一つだけ試すなら、
① 次の会議の準備
② 普段使う表計算の整理
③ 提出前の文書レビューのどれかがおすすめです。
「渡すもの」「頼むこと」「確認すること」を最初に決めれば、生成AIは文章を作るだけのツールから、仕事の前工程を整える道具へ変わります。

