
Sol・Terra・Lunaのどれをを選ぶか。
その決め手になるのは、その仕事にどれだけ重い判断を求めているかだ。
会議資料の初稿であれば、Terraで十分事足りる。
だが経営判断に使う数字を検証し、複数部門の利害がぶつかり合う中で結論を導き出す段階まで来れば、Solへ切り替えるべき局面である。
逆に、表記を揃えたり定型文を量産したりするだけの作業が続くなら、Lunaまで下げてしまった方が、待ち時間もコストも軽くなる。
最も判断を誤りやすいのは一つの仕事が進行する途中で、この「重さ」自体が変わってしまう瞬間である。
社内連絡のつもりで書き始めたメールが、気づけば取引先にも送られることになる。
簡単な市場調査のつもりが、いつの間にか新規事業の投資判断を左右する資料へと発展する。
こうなれば、最初に選んだモデルを使い続ける理由はもうどこにもない。
逆に、Solで方針を固め終えた後の転記や形式調整にまで、同じ重量級のモデルを働かせ続ける必要もない。
本稿では、判断の複雑さ、間違えた場合の影響の大きさ、検証のしやすさ、処理回数、そして公開範囲。
この5つの軸から、Sol・Terra・Lunaを上げ下げする考え方を整理していく。
メール、会議資料、PDF要約、Excel、記事制作、Web制作などの仕事。
さらに新サービスの企画書を提出するまでの一連の工程を通して、最初の一手の選び方と切り替えるべき瞬間を具体的に描き出す。
なお、2026年7月時点で、Sol・Terra・Lunaをすべて選べるのは、Plus・Pro・Business・EnterpriseのChatGPT WorkとCodex、そしてOpenAI APIに限られる。
標準のChatGPT会話では、TerraとLunaは選択肢に現れない。
OpenAIの提供範囲を踏まえ、本稿で「仕事に使う」と記す場合は、主にWork modeとCodexを想定していることをお断りしておく。
Sol・Terra・Lunaそれぞれの基本的な違いや提供範囲からおさらいしたい方は、前回の記事で整理していますので、そちらもあわせてご覧いただきたい。
記事はこちら:Codex Solとは?Terra・Lunaとの違いと使い分けを初心者向けに解説
モデル選択では、依頼文の長さよりも、その作業に含まれる不確実性を見た方がよい。
判断材料は:
1. 判断の複雑さ
2. 情報量と扱うファイル・ツールの数
3. 失敗時の影響と公開範囲
4. 人が検証できるか
5. 必要な速度
6. 反復回数とコスト
7. 修正・差し戻しの起こりやすさ
上記の7つにまとめられる。
たとえば大量のCSV整形は作業量こそ多いが変換規則と正解が明確ならLunaで回しやすい。
反対に、短い役員向けメールでも契約条件や補償の約束が入ればSolを選ぶ余地が生まれる。
文字数と難易度は一致しない。
ここでいう選び方はAI TOP TIERによる編集上の判断であり、OpenAIが職種別に指定したルールではない。
公式には、Solは複雑で開放的な高価値作業、Terraは推論とツール利用を伴う日常業務、Lunaは正解像が明確な大量・反復処理に向くと案内されている。
公式のモデル選択ガイドと照らしながら、自社の検収体制に合わせて調整したい。
「調査はSol」「メールはLuna」と仕事名だけで固定せず、工程を見る。
素材整理には速度、構成にはバランス、矛盾やリスクの検証には深い判断が必要になる。
OpenAIのWork/Codex向け案内では、標準のPower設定はSolのMediumで、迷った場合もSolを推奨している。
本稿の運用案では、比較、構成、ツール操作が残る通常業務をTerraから開始。
資料の矛盾、広い外部公開、金額・契約・経営判断が加わればSolへ上げ、判断後の抽出、転記、表記統一はLunaへ下げる。
公式の位置付けはSolが最も高い能力、Terraが能力とコストの均衡、Lunaが最速・最安。
実際の応答時間は入力や推論量、ツール利用で変わり、モデル別の一律な所要時間は公表されていない。
モデルと推論レベルは別軸だ。
公式ガイドはLight/Low、Medium、High、Extra Highを示し、対応環境にはMaxや複数エージェントを使うUltraもある。
同じモデルの推論レベルを上げて足りる場合もあるが、設定を高くするほど時間とトークンを使う。
API単価は100万トークンあたり入力/出力がSol 5ドル/30ドル、Terra 2.50ドル/15ドル、Luna 1ドル/6ドル。
Codexのクレジットも同じ比率だが、消費量は入力、出力、キャッシュ、ツール、推論量で変わる。
API料金とCodexレートカードは分けて確認したい。
APIでは3モデルとも105万トークンで、Web・ファイル検索、Code Interpreter、Computer Use、MCPなどに対応する。
一方、ChatGPT Businessの案内はSol 272K、Terra/Luna 128K。
Workで使えるファイル、接続アプリ、操作権限はプランや管理者設定に左右されるため、API仕様をそのまま当てはめない。
まず初手と切り替え条件を一覧で確認し、その後で例外と指示例を掘り下げる。
日程案内や受領連絡のように目的、相手、文体が決まっている文面はLunaから始められる。
速く複数案を出し、担当者が宛先や日時を確認できるためだ。
表現の調整が増えたらTerraへ切り替え、謝罪、補償、契約条件、複数部署の利害調整が入る場合はSolへ上げる。
指示は「過去の文例に合わせ、結論を冒頭に置く。
新しい約束は作らず、未確定事項は[要確認]と表示」のように、禁止事項まで渡す。
人が見るのは宛先、日付、金額、約束の範囲、添付の有無。
Lunaのまま重要文書を作ると含意を落としやすく、反対に定型通知を毎回Solへ回せば待ち時間と消費だけが増える。
議事メモと数値資料から10枚の社内説明資料を作るなら、初手はTerraが扱いやすい。
構成、要約、比較、スライド化を一通り進める力と速度の折り合いがよい。
Lunaには見出し候補の量産、箇条書きの長さ調整、表記統一を任せられる。
役員会、融資、重要取引の提案へ用途が変わった時点でSolへ上げ、「反対意見を3つ挙げ、根拠の弱い数値と前提が矛盾するページを特定してから再構成」と頼む。
確認対象は出典、集計期間、グラフ軸、引用権利、口頭説明との整合。Solの指摘を人が採用した後は、スライドへの反映をTerraへ戻す。
選択が軽すぎると見栄えのよい要約で止まり、重すぎると初期案の段階で作り込み過ぎる。
単一PDFから「主張・根拠・数値・該当ページ」を固定形式で抜く作業はLuna向きだ。
要約後に複数資料を比較する段階でTerraへ渡し、資料同士の結論が食い違う、調査設計の妥当性まで問う、経営判断用のメモにするならSolへ進める。
「推測を混ぜず、各項目にページ番号を付け、読めない箇所は不明と記載」と指定する。
人は原文の例外条件、調査母数、発行日、改訂版かどうかを確認したい。
モデル選択を誤ると、Lunaでは但し書きが圧縮され、Solでは大量の単純抽出に過剰なコストをかける。
なお、投入できるファイル数や容量はモデルだけでなく利用環境にも左右される。
競合5社の機能、価格、対象顧客を調べ、比較軸を作る仕事はTerraから始める。
企業名の収集やカテゴリ分けはLunaへ分けられるが、検索結果を並べるだけでは意思決定に届かない。
新規参入、投資、撤退の判断に使う場合や、情報が乏しく仮説の反証が必要な場面ではSolが候補になる。
指示例は「2026年7月時点の公式情報を優先し、事実・企業の主張・推測を分ける。
価格は税、契約期間、対象地域も記載」。人はリンク先、取得日、比較条件、未上場企業の推計値を再確認する。
Solで投資判断の反証まで終えた後は、承認済みの比較軸でレポートを整える工程をTerraへ戻せる。
軽いモデルへ寄せ過ぎると比較軸が浅くなり、Solを選んでも情報源が弱ければ精巧な誤解ができあがる。
売上CSVの欠損確認、月次集計、異常値候補の抽出まで含むならTerraを初手に置く。
分析方法が確定した後の列名統一、日付変換、重複削除はLunaで反復できる。
複数シートの定義が衝突する、財務モデルを組む、結果が予算配分へ直結する場合はSolで前提と計算設計を検証したい。
「元データを変更せず別シートに出力し、処理前後の件数、除外理由、使用式を記録」と依頼する。
担当者は合計値、税区分、単位、外れ値、参照範囲、再計算結果を見る。
Solで計算方針と例外を確定したら、式の実装や説明シートの作成はTerraへ移してよい。
Lunaに曖昧な分析判断まで任せると業務定義の違いを見落としやすく、Solでも因果関係のない相関をもっともらしく説明する可能性は残る。
商品情報と読者像から投稿や記事の初稿を作るならTerraが中心になる。
Lunaは見出し50案、文字数違い、媒体別の再編集に回すと効率がよい。
炎上時の声明、薬機法・景品表示法に触れ得る表現、ブランド刷新、大きな広告予算を伴う企画はSolで反論と誤読の可能性まで検討する。
「確認済み事実だけを使い、未確認の効果は断定しない。
媒体、文字数、避ける語、CTAを守り、根拠の必要な文へ印を付ける」と渡す。
人は事実、権利、広告規定、リンク先、ブランドの声を検収する。
Solで論点と禁止表現を固めた後の本文制作はTerra、媒体別の短縮はLunaという順番が使いやすい。
Lunaだけでは表現が均質になりやすく、Solの文章も出典のない訴求を自動的に真実へ変えてくれるわけではない。
問い合わせ管理や在庫確認の小さなツールなら、Terraで要件整理、画面設計、実装、テストの順に進められる。
文言変更、静的ページの作成、同じ形式の修正はLunaへ下げてもよい。
認証、決済、個人情報、権限分離、既存システムとの複雑な連携が入れば、Solで脅威、例外、移行手順を先に洗う。
指示には「利用者、保存データ、公開範囲、完了条件、変更禁止箇所、テスト方法」を含める。
人は認証・権限、APIキー、依存関係、バックアップ、アクセシビリティ、実機表示を確認する。
Solで要件とセキュリティ境界を確定した後は、通常の実装や修正をTerraへ戻せる。
軽すぎる選択は境界条件を落とし、Solへ丸投げすると要求されていない機能まで膨らむことがある。
契約書の論点抽出は、短くても失敗影響が大きいためSolから始める。
ここでの役割は法的結論ではなく、条項、例外、相互参照、変更点、質問候補を整理する補助だ。
論点が確定した後の新旧対照や通常条項の一覧化はTerra、条番号や表記の整形はLunaへ移せる。
「結論を断定せず、該当条番号と原文を示し、当社に不利になり得る条件、欠けている前提、専門家へ聞く質問を分ける」と指示する。
最終確認は法務担当者や弁護士が行い、契約主体、準拠法、金額、期限、解除、責任制限を原本で照合する。
どのモデルでも条文を読み違える可能性があり、AI出力だけで締結を決めてはいけない。
承認済みFAQに基づく営業時間や手順の案内はLunaで十分なことが多い。
質問が曖昧、履歴を読み分ける、複数候補を説明するといった場面でTerraへ上げる。
重大苦情、返金、事故、法的含意、SNSでの拡散が絡む場合はSolで事実関係と対応案を整理し、人の承認後に送る。
「FAQの範囲外は回答せず担当者へ引き継ぐ。
返金や納期を新しく約束しない。参照したFAQ番号を末尾に記す」と渡す。
本人確認、注文情報、在庫、金額、約束、感情への配慮は人が見る。
モデルを下げ過ぎると文脈を外した定型回答になり、上位モデルでも権限のない補償案を生成する危険は消えない。
受注メールを読み、在庫表を確認し、見積書を作り、下書きメールまで用意する流れはTerraが起点になる。
工程と承認点を設計した後、同じ形式の転記や分類はLunaで回せる。
支払い、削除、外部送信、複数システムの更新、例外処理を含むならSolで計画とリスクを確認し、不可逆操作の直前で人を止める。
「最初に計画を示し、読み取りと変更を区別する。
送信・購入・削除・公開の前は必ず承認を求め、実行ログを残す」と指示する。
人は対象、権限、金額、送信先、変更差分を検収する。
Solで例外処理と承認点を設計した後、通常ケースの実行はTerraへ戻し、確定済みの反復部分だけLunaへ分ける。
Solを選んでも操作権限や承認は代替されず、Lunaへ固定すると想定外の入力に同じ手順を機械的に当てやすい。
新サービスの企画書を作り、上司や取引先へ提出するまでを考える。
すべてを一つのモデルで通すより、判断が必要な地点だけ計算資源を厚くする方が品質と消費の関係を説明しやすい。
最初のLunaには「固有名詞を変えず、重複をまとめ、事実・要望・仮説へ分類。不明点は補わない」と頼む。
まだ企画の良し悪しは判断させない。
次のTerraでは、対象顧客、課題、提供価値、競合、収益、実行計画の順に初稿を組み、根拠がない部分を空欄にする。
Solを使うのは、初稿を豪華にするためではない。
「この企画を見送る理由を先に挙げる」
「売上前提が半分でも成立するか」
「顧客課題と機能が対応しているか」と
反証させ、決裁前の弱点を見つける工程である。
指摘を人が採否判断した後は、Terraへ戻してテンプレートへ反映する。
判断済みの修正にSolを使い続ける必然性は薄い。
最後のLunaには、誤字、ページ番号、図表番号、ファイル名、提出形式、未確定マークの残存を機械的に点検させる。
ただし数値と引用は原資料へ戻り、人が照合する。モデルを下げるのは品質を諦める操作ではなく、工程の不確実性が下がったためだ。
最も起きやすいのは、上位モデルなら検収も不要だと考えることだ。
Solは判断材料を深く扱えるが、誤った資料、古い価格、権限のない約束まで正してくれるとは限らない。
反対に、コストだけを見てLunaへ固定すると、前提が変わった仕事でも以前の手順を繰り返してしまう。
もう一つの失敗は途中で条件が変わってもモデルを据え置くこと。
社内メモが取引先提出資料へ変わった、定型返信が返金交渉へ発展した、といった変化は選び直す合図になる。
Solで設計した後に単純作業へ移ったのに下げないのも、同じ種類の判断停止だ。
チームでは、次の簡易ルールから始めると運用しやすい。
実行履歴には、モデル名だけでなく「選んだ理由」「参照した資料」「人が承認する地点」「上げ下げする条件」を残す。
月に一度、差し戻し率、処理時間、消費クレジットを見れば、部署ごとの基準を経験則ではなく実績で直せる。
なお、OpenAI公式は迷った場合にSolを推奨しているため、赤・黄・緑の分類に自信が持てない高影響業務はSol側へ倒すのが無難だ。
次の仕事で迷ったら、まず成果物の公開範囲と、間違えた時に誰が困るかを確認する。
影響が限定され、比較や制作が中心ならTerra。手順と正解が固まり、反復処理へ移ったらLuna。
前提が曖昧なまま重要な判断を迫られる、または外部へ広く出す段階ならSolへ上げる。
選択後も固定しない。
作業の途中で不確実性が増えれば上げ、判断が終われば下げる。
最後はモデルに関係なく、数値、固有名詞、権限、法的・金銭的な約束を人が確認する。
3モデルの基礎から見直したい場合は、Sol・Terra・Lunaの違いを整理した第1弾もあわせて確認してほしい。

