
AIを使ってバグを見つけたら、高額な報奨金をもらえるかもしれない。
そんな話は、すでに日本でも現実になっています。
GMOサイバーセキュリティ byイエラエは2026年7月、人の専門知識とAIを組み合わせてLinuxカーネルの脆弱性を発見し、GoogleのkernelCTFで8万米ドル超を獲得したと発表しました。
ただし、AIに「バグを探して」と頼み、その回答を送れば稼げるわけではありません。
報奨金の対象になるのは、企業が定めた範囲で見つかった、検証可能な問題です。
本記事では、日本から参加を検討できる13のバグバウンティを紹介します。
AIを調査の補助に使う話と、AI製品そのものの安全性を調べる話を分け、高額報酬の可能性と参加の現実を整理します。情報確認日は2026年10月6日です。
バグバウンティは、企業や団体が対象製品の脆弱性を募集し、有効な報告に報奨金を支払う仕組みです。
作業時間ではなく、発見した問題の価値に対して報酬が決まります。
例えば、許可された検証環境で、本来見られないデータにアクセスできる問題が見つかり、企業側が再現できる形で報告できれば、報奨金の対象になる可能性があります。
ただの表示崩れや「不具合がありそう」という推測まで、すべて買い取ってもらえる制度ではありません。
AIとの関係は二つあります。一つは、コードの理解や調査、報告書の整理にAIを使うこと。
もう一つは、AIエージェントの機密情報流出など、AI製品に特有の問題を調べることです。
従来のWebやOSの制度でもAIを補助に使う余地はありますが、AI利用や外部サービスへの情報送信が許されるかは個別規約が優先されます。
「誰でも応募できる」と「誰でも報酬を得られる」は別です。
AIの回答を読み、問題を再現し、影響を説明する力が求められます。
上限報酬も平均収入や初心者の期待収益ではありません。
以下は、日本から参加を検討できる公開制度・応募制制度の候補です。
日本人であることだけで参加資格が確定するわけではなく、居住地、年齢、雇用関係、本人確認、報酬の受け取り条件が適用されます。
海外制度への報告は英語中心と考えると準備しやすいでしょう。
Microsoft、Apple、Mozillaは公開規約の居住地・参加条件から日本在住者が対象になり得ることを確認できます。
GoogleとOpenAIは国際的な研究者向け制度で、Anthropicも世界の研究者から応募を募っています。
ただし、個別の登録・支払い適格性は申込み時の規約で確認が必要です。各制度でAI利用が一律に許可されるとは断定できません。
金額は米ドルです。現行一覧で確認できた値と過去の公式公表値を区別しました。受付状況や報酬は変更されるため、リンク先の募集要項が優先されます。
報酬:特別に重大な成果は最大$100,000(公表値)
参加:公開制度。Bugcrowdの最新条件を確認
ChatGPTやAPIなどのセキュリティ上の脆弱性が対象。
安全性の一般的な懸念とは報告先が異なります。
最大額は2025年の公式発表で示された値で、現行の報酬・対象表が優先されます。
報酬:Bugcrowd公開一覧では最大$2,000。ポイントのみの場合もある
参加:公開募集。個別の適格条件を確認
AIエージェントの操作乗っ取りや情報流出など、具体的な被害につながる問題を扱います。
単に不適切な言葉を出させるだけの一般的なjailbreakは対象外です。
報酬:最大$35,000
参加:応募・選考・招待制。秘密保持契約が必要
指定されたモデル安全対策の問題を調べる継続制度です。
世界の研究者向けに募集されていますが、応募だけで参加が決まるわけではありません。
承認された検証範囲でのみ活動します。
報酬:最大$30,000
参加:日本在住者も共通条件を満たせば対象
CopilotのAI体験に関する脆弱性を対象とします。
期間限定のMicrosoft 365 Copilot企画と、継続制度を混同しないよう注意してください。
報酬:最大$60,000
参加:日本在住者も共通条件を満たせば対象
対象となるAzureクラウドサービスの脆弱性を募集します。
利用者がAzure上に作った任意のシステムまで調査が許可されるわけではありません。
報酬:最大$100,000
参加:日本在住者も共通条件を満たせば対象
Microsoft Accountなどの認証・IDサービスを対象にする制度です。
認証や権限管理の知識を持つ研究者向けです。
報酬:最大$250,000
参加:日本在住者も共通条件を満たせば対象
仮想化基盤Hyper-Vの重大な脆弱性を扱います。
高額枠ですが、OSや仮想化の高度な知識が必要な研究領域です。
報酬:基本報酬の最高カテゴリは$2,000,000。追加ボーナスあり
参加:規約上、日本を除外する地域制限なし
Apple製品や公開サービスの安全性・プライバシーに関わる問題を募集します。
最高カテゴリは高度な攻撃連鎖の実証が前提です。Apple Payなどの除外範囲もあります。
報酬:公式発表では品質・新規性の加算により最大$30,000
参加:国際的な研究者向け。個別規約を確認
GoogleのAI製品に固有の脆弱性や悪用リスクを扱う専用制度です。
AIの間違いをすべて報奨金対象にする制度ではなく、指定された影響と報告条件を満たす必要があります。
報酬:フルチェーン等の指定枠で最大$250,000。別枠あり
参加:国際的な研究者向け。個別規約を確認
ブラウザの安全性を調べる制度です。
2026年のルール変更で、高い影響を実証する研究を重視しています。
最高額の枠には対象環境や件数の条件があります。
報酬:公式に公表された主要枠は最大$151,515
参加:国際的な研究者向け。個別規約を確認
対象となるGoogle Cloud製品・サービスを調べます。
この額は過去の公式発表に基づく参考値で、現在の個別報酬表を確認してから参加してください。
報酬:現行ルールでは勝者となる適格成果に$71,337
参加:日本企業の獲得実績あり。募集枠の開放時のみ
指定されたLinuxカーネル環境で成果を実証する制度です。
2026年9月4日適用のルールでは、募集枠ごとに実行速度と安定性を評価して勝者を選びます。
条件を満たすすべての投稿への一律支払いではありません。
報酬:通常枠は最大$20,000。条件付きの追加加算あり
参加:規約上、日本を除外する地域制限なし
Firefoxなどのクライアント製品の脆弱性や防御機構の回避を募集します。
再現できるテストケースなど、問題を診断・修正するための情報が必要です。
選び方の目安として、AI製品の挙動に関心がある人はOpenAI Safety、Google AI、Microsoft Copilotの対象範囲を読み比べるとよいでしょう。
OSやブラウザの解析経験がある人はApple、Chrome、Firefox、kernelCTFが候補になります。
これは分野の相性であり、初心者でも簡単に稼げる順番ではありません。
国内の具体例が、GMOサイバーセキュリティ byイエラエの成果です。
同社によると、約19年間見過ごされていたLinuxカーネルの脆弱性を、人の知見とAIを組み合わせて発見し、kernelCTFで8万米ドル超を獲得しました。
ファジングツールが検知したクラッシュを詳しく解析したことが発見につながったと説明しています。
ここから確認できるのは、専門家がAIを補助に使って成果を出したことです。
「未経験者がChatGPTだけで同じ報酬を得られる」とは読み取れません。
同社の発見者も、今回のような複雑な問題をAIだけで突き止めるのは現時点では難しいと述べています。
また、獲得時と現在ではkernelCTFの報酬体系が異なります。
一般の参加者がAIを使うなら、まず制度の理解と調査結果の整理が現実的です。
募集要項を読み、対象製品・禁止行為・必要な報告項目を整理する。
公開コードや自分の検証環境のログについて、分からない処理を説明してもらう。
自分で確認した再現手順を、読み手が追試できる文章へ整える。
こうした用途は、調査の手間を減らす可能性があります。
ただし、これは本記事の活用提案であり、報酬獲得を保証する方法ではありません。
AIが示した問題の存在、原因、重大度は自分で検証します。
顧客情報、秘密情報、非公開のプログラム資料を外部AIへ渡す前には、機密保持やデータ送信の規約も確認してください。
AIは「答えを作る係」にすると誤報を増やしかねません。
「理解と整理を助ける係」として使い、検証結果に基づいて報告する方が、制度の要求に合っています。
GoogleのOSS向け制度は自動投稿の急増で一部受付停止と報じられています。全制度の停止ではありません。
停止範囲の確認では、OSS VRPとChrome、Cloud、AI、kernelCTFなどを区別する必要があります。
ある窓口の停止を理由に、別の制度も終了したとは判断できません。
記事で紹介した各プログラムも、調査を始める前に受付中の対象を確認してください。
AIによる低品質な報告への対応は、公式規約にも表れています。
GitHubは2026年7月、公開制度の報酬体系を変更し、高品質な成果を継続して出す研究者向けのVIP制度を導入しました。
低品質・AI生成の報告を減らすために投稿条件も厳格化し、基準未達の新規研究者には初期投稿数の制限を設けています。
公開制度のCritical報酬目安は$10,000、VIPでは$30,000以上です。
Appleも、人が検証していないAI生成・AI補助の報告など、誤った主張を繰り返し送る行為を参加終了の対象として規約に明記しています。
AIの使用そのものを一律に禁止している、という意味ではありません。
国内ではサイボウズが制度見直しのために新規受付を一時停止しています。
通常の脆弱性報告は受け付けますが、停止期間中は報奨金対象外です。
LINE Security Bug Bountyも、2025年12月3日以降の報告には報奨金を支払わないと告知しています。
これらを現在の報酬獲得先として紹介するのは適切ではなく、AI投稿が停止原因だったとも確認できません。
これらの動きから考えられるのは、AIで報告を量産するほど有利になるとは限らないということです。
読む側にも検証の時間がかかります。
問題が実在するか、何が危険なのか、どう再現するかを確かめていない文章は、その時間を消費してしまいます。
最初に確認するのは、対象範囲です。企業名が同じでも、対象外のドメイン、第三者のサービス、本番の顧客環境などは調査が許可されていない場合があります。
募集要項の「in scope」と「out of scope」を読み、自分のアカウントや指定された検証環境で、許可された方法だけを使います。
次に、報告を受け取った担当者が同じ結果を確認できるかを考えます。製品名とバージョン、必要な設定、再現手順、期待した結果と実際の結果、安全上の影響をまとめます。
AIが書いた長い説明より、確認済みの短い手順と証拠の方が役立つ場合があります。MicrosoftやMozillaの公式要項も、再現・診断・修正に必要な情報を求めています。
報酬が出ない場合もあります。
既知の問題、重複投稿、対象外の製品、影響を実証できない報告などです。
「発見したと思う」段階と「報奨金対象として認められる」段階の間には審査があります。
参加前には、支払いの条件も確認しましょう。
Microsoftでは年齢条件や所属先の許可に加え、支払いのための税務書類を求めています。
日本在住だから無条件で受け取れるわけではありません。
AIの利用料や検証環境の費用が先に発生しても、報奨金が出ない可能性があります。
未経験なら、いきなり最高報酬の制度を狙うより、学習用のローカル環境やCTFで仕組みと報告方法を学ぶところから始める方が現実的です。
準備ができたら、一つの制度に絞り、許可された小さな範囲で検証し、証拠を確認してから投稿します。
AIに報告数を増やさせるより、自分が理解して説明できる一件を作ることを優先してください。
AIを使って高額な報奨金を狙う道はあります。
日本でも、人の専門知識とAIを組み合わせた獲得事例が出ています。
一方で、AIが作った未検証の報告を大量に送る行動は、受付停止や参加条件の厳格化につながっています。
報奨金の価値を決めるのは、文章の量ではなく、実在する問題をどこまで明確に示せるかです。
まずは興味のある制度を一つ選び、対象範囲と報告条件を読む。
そのうえで学習環境で検証の基礎を身につけ、AIを理解と整理の補助に使う。
高額報酬への可能性を残しながら、現実的に始めるなら、この順序がよいでしょう。

